誰のためにも生きれぬ僕は
『誰かのために生きてこそ、人生には価値がある』 かの有名なアインシュタインの言葉らしい。
僕は誰のために生きているんだろうか。
色々なことを頑張ってきた。就活の自己PRのネタが多すぎて逆に困るくらいには色々やった。 楽しいことも辛いことも経験してきた。友達だって同性異性問わずそれなりにいるはずだ。
それでも、僕は「みんな」のため、「組織」のためにしか頑張っていなかったんだ。
そうやって「みんな」のために頑張り続けて、僕は誰も好きになれず嫌いにもなれなくなった。
大切な時間は失ってから気付くものだ。 これからの人生、誰か一人のために生きることが出来るだろうか。 大切な一人の人に向き合うことが出来るだろうか。
タバコ
「これはささやかな抵抗なんだ」
僕はそう呟いて、タバコの煙を吸い込んだ。
健康に悪いと君は言ったけれど、健康に悪いからこそ、僕はタバコを吸っているのだ。 惰性で生きる毎日への、ささやかな抵抗なのだ。 煙が身体中に広がっていく。肺の奥までしっかり吸い込んでから、ゆっくりと上に向かって煙を吐き出す。 体の中にあったストレスが外に出ていく感覚。気持ちが良い。
こんなことを説明しても、きっと君は分かってくれないのだろう。 君は僕より自由だから。君は僕よりお金を持っているから。
君はサークルを楽しんで、恋愛を楽しんで、留学を楽しんで、それなりの企業にすんなり就職を決めるのだ。きっと君は高校時代もそうやって楽しい生活をしていたのだろう。 対する僕は、必死でサークルで仕事して、必死で自治会で仕事して、何も楽しむ余裕なんてなかった。高校時代も必死で勉強だけしていたら何も楽しめなかった。
結局、必死で頑張って掴んだものは何も無いのだ。勉強以外の経験を楽しもうと思って入学したはずの大学でも、同じ失敗をしていたのだ。
僕は君より良い企業に就職するかもしれない。それでも君に勝つことは出来ない。どれだけお金を得て、そのお金を全部つぎ込んでも、僕の後悔を消すことは出来ない。
タバコ1本で5分寿命が縮まるらしい。僕はもう一本タバコを取り出す。あと何本吸ったら、取り返しのつかない所まで来てしまった僕の人生は終わってくれるのだろうか。
※ この物語はフィクションです